吹き溜まり
本や音楽やライブや映画やゲームのこと。
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『MOUSE』
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MOUSE(マウス) 牧野 修 早川書房 1996-02 by G-Tools |
一言で言ってしまえばドラッグ・ドリーム。
ドラッグの常習者である18歳までの少年少女を主人公に、
常識的な感覚が麻痺し、それを超越した別次元の感覚が占領する空間。
その隔絶された空間で起こる、言葉で交わされる戦い。
今までドラッグ小説というのは呼んだことがなかったが、
何となくやはりどこかがダメになってしまった人間が刻々と描かれる、
というのを想像していたが、
これはその既成概念とは異なる感覚を受けた。
【ネバーランド】
18歳までの外の世界で生きることの出来ない少年少女が、
ドラッグを常習し、
ある者は自らで金を稼ぎ、
ある者はドラッグによる特異な感覚で生業とし、
またはそれで稼ぎ、
どの場合にもドラッグを体内に含まない者は存在しない、そんな区域。
【ネバーランド】で交わされる少年少女の生活と、
言葉による【落とす】行為。
短篇5つからなるストーリーは、最後の「ボーイズ・ライフ」で交錯する。
ドラッグを服用している者だけに通用する現実感。
そしてそれを利用して行われる言葉攻め。
相手個有にしか通用しない言葉を見つけ、バッド・ドリームへと誘う。
また、同じ幻覚を共有するために行われる同調行為。
不思議で意味のないことばで紡ぎだされる世界。
また、その【ネバーランド】の裏に潜む構造。
ドラッグの、奇妙でで残酷な感覚が味わえる作品。
解説で風間賢二氏が
「きわめて幻想的かつ思索的な”意識の変容”を語ったもの」
と書いている。
独特な言葉で描かれる感覚世界に酔いしれたい人向けな作品。
私はというと、そう退屈することも無かったものの、
面白いという作品ではないと思った。
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