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吹き溜まり

本や音楽やライブや映画やゲームのこと。

   
カテゴリー「小説」の記事一覧

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『沈黙のフライバイ』/野尻抱介

4150308799 沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)
野尻 抱介
早川書房 2007-02

by G-Tools

時間がかかってしまった(ノ_-;)...
いつ読み始めたんだっけか?
ここんとこミステリー系が集中してたので、
久方ぶりのSF宇宙モノ。
野尻氏の作品は、『太陽の簒奪者』以来の2作品目。
短編集だが、著者の事実経験と空想のミックス作品。
巻末にて、「野尻氏の作品が理性的」という解説になるほど納得。
『太陽の簒奪者』の時に感じていた違和感がまさにそれだ。
ストーリーもネタもとてもおいしく読ませて頂いたが、
キャラクターに何か違和感があった。不自然というか。
面白くないとかではないけど、何か違和感・・・みたいな。
しかし、この短編集ではその変な違和感は感じなかった。
キャラクターの純粋な宇宙への憧れが心地いい。好きだ。
短編集だと、とんとん拍子にことが上手く運んだり、
人物の心情や行動描写がしっくりくる感じがする。
なによりいいと思ったのは、人物の感情表現が押しつけがましくない!

今作の短編集では、未来の宇宙科学と、新技術をもとに、
純粋に宇宙を求めた人間が描かれる。
恐ろしく細く、強靭なカーボン材料の糸。
宇宙服のようなポッドの中で生活循環を終始させる技術。
ただ漠然と宇宙を求める人たち。
やっぱり宇宙はいいね('-'*)
普段の生活では身近に感じることなんてないけど、
常に自分たちが内包されている存在だと考えるだけで、
日常から意識を脱出させるきっかけになる。

次の予定本もSF宇宙モノ。初著者だ、さてどんなかな。
 

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『悪の教典』/貴志祐介

悪の教典 上    悪の教典 下

何かと話題になっていたこの作品。
TVで紹介されていたのを見てから本屋で発見し、
何か面白そうかも…と(積読山は忘れて)購入。
ハードカバー本は久方ぶりだぜ。
といっても読後3週間以上経っていたり;
何気に分厚い(3cm×2)が時間はあまりかからなかった。
著者の本はこれが初めてで、昔映画化もされ話題になった『青の炎』は、
何か漫画化したのをちょろっと読んだような気がする。

大筋というか、この本の中に何が書かれているのかは、
帯にはっきり明記してある。

うちの学校には怪物がいる。

学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は、
高いIQと好青年の貌を持っていた。           『悪の教典』帯より

読み始めてすぐに教典の実行者は知れる。
【いい先生】、しかも現代の難しい子供像も内包した上での、
バランスを考えた【人気のある先生】。
容姿端麗。
優しい。
生徒思い。
守ってくれる。
自分を見てくれる。
自分(たち)の為に何かしてくれる。
初めこそ普通の親しみのある良い先生が描かれるが、
下巻のオープニングに向かっての緩やかだが確実な堕ち方が何とも言えない。
淡々と、調味料の選択と同じように、
考え、選択し、実行していく。
あれ、今の…?
ちょっと…
そ、そんな簡単に…
え?
というような感じで、一つまた一つと灯が消えていく。
実行者の先生はそれこそ、寝る前にキャンドルを消すくらいの意志で。
下巻における学校内での殺戮に至る思考回路の単純さに絶望する。
思考が飛び過ぎて怖いとも感じない。
ただ、何か気持ち悪さのある奇妙な実験のよう。
生まれおちてから感情が芽生えず、
結果周りに馴染めない自分をすぐ理解し、感情を意図的に表現した生き物。
感情のパターンやバリエーションを吸収し、
より、人間らしい、それも良い人間へと自分への客観像を形成していく。
他人の感情を観察、分析することで、それらを誘導することもできるようになる。
でも結局のところ、感情がなかった訳ではないと思うんだよね。
憐れみや、感謝は描かれていたから。
それも、自分の内で済むことを敢えて感情とさせたのだし。
計算上なら、その場面での憐れみは必要ない。
では、彼は一体何だったのか。
読み手の私が一番しっくりくるのが、ゲームみたいだったってのだ。
何かコマンドで動いてるって感じが読んでる最中からしていて。
作中一番多く描かれるのが、やはり彼のことだが、
掘り下げて過去やら思考やらがいっぱいある割には、
異常性でどんどん浮いていっている感じ。
そして、IQ高い先生に対しての生徒や、他の先生たちの抵抗が少ないのが、
ちょっと盛り上がりに欠けた。
摘まれるのが早すぎたり、あまりに役立たずだったり。
一方的な殺戮で終始先生の優勢で…あ、いや、
むしろ状況的には劣勢な上での最後の殺戮になるのか。
自棄になっての殺戮とも取れるが、
殺ッている最中は冷静なことこの上なく。
ココがこうなって、アレがそうなるから、コレをしておこう、みたいな。

先の展開が気になって、一気に読めた作品だけども、
最後の最後の絞めは、なんか符に落ちない。
Pも少なく、あそこで終わらすなら、もっと何か違った堕ちが欲しかった気がする。
唐突にぶった切られたような、急いで終わったような…

『時砂の王』/小川一水

4150309043 時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房 2007-10

by G-Tools

読み終えたのはもう結構前になるが、
久しぶりの宇宙SFモノ。
って遡ってみたら、なんと2007/3に『星界の断章・2』を読んで以来。
3年以上前か、そんなにか。
確かにここんとこミステリー寄りだったか、辻村さん作品連続してたもんな。
私的にこのジャンルのホープだと思っているので、
新作は出る度に購入済みだ。消化しきれてないだけ!

SF~と思いつつ読み始めると、初っ端似つかわしくない呼称と環境にちとビビる。
はい、きちんと帯見ましょうね。
でかでかと明記してあるでないの。

私は2300年後の世界から来た。
だが、ここの未来からではない。
多くの滅びた時間枝を渡ってきた。      『時砂の王』帯より

概要としてはこの帯通り。
時空を越える技術を得た人類が、
ET(地球外生命)の攻撃で今にも滅びそうな人類を救うため、
過去、ET侵略の傷が浅いうちに駆逐しようぜ計画を実行している未来の話。
舞台は卑弥呼の存在した時代と遥か未来との交互で展開する。
時間遡行を実行し、人類存続の為の戦士として生まれた、
人工メッセンジャーであるオーヴィル。
心通わせた生粋の人であるサヤカとの出会いで、
正しく、人類救済の為の果てしない時間遡行を繰り返す彼は、
人工と言っても、感情も尋常じゃない量の記憶も持ち合わせていた。

時間遡行が可能になると、合わせて時間枝の枝分かれが激しくなる。
過去へ行き、未来が変化し、もともとオーヴィルが居た時間枝と、
それとは別の平行世界が派生し、しかしそれも実態、
存在としてはオーヴィルのいる時間枝と存在の仕方は同じ。
本筋なんてものは定義できず、
個々の認識によって変容する世界の捉え方があり、
考えていくとイメージが交錯してしまう。
兎に角、過去を遡っては、その時代にいる人と接触し、
協力を乞うてETの殲滅をはかる訳だ。
ちょうど【今】あたりの過去に時間遡行した時の話は、
実際そうなるんだろうなーと虚しくなった。
いつでもどこでも裏で考え、動く人間はいるもの。
例え世界の危機であっても、それを信じようが信じまいが。
それなら、いっそのこと卑弥呼あたりまで遡った方が、
結果的には扱いやすいし誘導しやすいよね。

時間が違えど、描かれる舞台はそんな広くない為、
若干物足りなさというか、盛り上がりが足らなかった感はあるが、
閑話としては十分だった。
引き続き読破したものは近いうちに。

『スロウハイツの神様』/辻村深月

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)     スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)

登場人物のチヨダ・コーキの著作である『V.T.R』(辻村深月)も続けて読もうと、
本棚から選んだこの作品。
はー、参った。ちょっと間を開けて後に読もう。
凄く良かった。
面白いとか、展開に騙されたとか、
私の読書、その他エンターテインメントにおける評価って、
面白いか、面白くないか、でほぼ二分される。
『スロウハイツの神様』も、面白かったことに変わりはないけれど、
それ以上に、【凄く良かった】という方がしっくりくる。
言葉としてはあまりに飾り気のない賛辞というのも疑われる言葉。
それでも、登場人物を愛しく思い、途中涙しそうになるくらい、
この物語は凄く良かった。

読み始めはてっきりミステリと思いこんでいた。
集団自殺の現場でゲームのように御互いを殺しあった凄惨な事件。
その開催者が傾倒していた小説の作者、チヨダ・コーキ。
小説の冒頭は「チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ」。
どう考えてもミステリかと思う。
ましてや著者のメインジャンルはミステリであるし。
でも、上巻を読み終えても誰か死ぬわけでもなく、人間関係の事件はあれど、
命にかかわる事件は一向に起きる気配がない。
しかし、事件がなくても、【スロウハイツ】での出来事に目が離せなくなる。
気の合う者同士で古い旅館であったアパートに住み、
それぞれがクリエーターであり、強い、弱い人間であり、
なんてこんなに愛おしい。
物語の終わりに近づくとき、まだ彼らを眺めていたいと強く思った。
私の想像上で確実に息づく彼ら。
私もこうして小説を好んで読んでいる。
赤羽環もチヨダ・コーキの小説で生きることを諦めなかった。
私にとってのチヨダ・コーキの作品は、多分上遠野浩平作品かと思う。
学生の頃夢中になって読んだ彼の作品を読まなくなって久しい。
つまらなくなったとか、興味が失せたとかはなかったはずなのに、
いつの間にか、気付いたら。
最も、この状況は赤羽環にしてみたら罵倒されそうだけど。
彼女はチヨダ・コーキ作品を求め続けた。
コーキ自身が、著書を時代を切り取った、期間限定のものとし、
ある年齢になると自然に卒業されてしまう作品との評価を理解していたにも関わらず、
赤羽環はそうではなかった。

彼らの幸せを心から願っている。
エピローグがなければ、いつかまた彼らに会いたいと思ったところだが、
もう、覘くのは遠慮しよう。
エピローグをの最後を読んだ私は、
コーキが環の作品への感想を述べた時の、
狩野のあの、歓喜。

やっぱりまだ読んでいたかった。

 

『ふちなしのかがみ』/辻村深月

4048739298 ふちなしのかがみ
辻村 深月
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-07-01

by G-Tools

やろうと思いつつやってないことが多すぎるこのごろ。
とりあえず花綾さんに以前作成した「蝶」のmidiを押しつけておこうか…?
そして襲い来る眠気…zzz。
普段夜行性なのに時々訪れるこの睡魔期。
12時までもたないとかどんだけ。
今日は読書しながらこの時間まで耐えたよ!

てな訳で読書が波に乗ってます。
頑張れ私。途切れさせるな私。
積りに積もった本を物色しつつ、今の季節にぴったりだと今回はこの本。
5つの物語で綴られる短編集。
辻村さんの短編集を読むのはこれが初めて。
御馴染の【トイレの花子さん】、【コックリさん】、
その他オリジナルなストーリーを展開させつつ、相変わらず痛いところをつつく。
とある登場人物と全く同じことを思った事があるのだが、
あまりに心ないことなので自己嫌悪。
それにしても人間ってつまるところ自己顕示欲から成り立っているよなと思う。
クラスの【上の方】と【下の方】、痛いほどに覚えのある不均衡。
あぁ、あったよ、こんな空気。
あと、わざとなんだろうけど、
話の真相をぼかしたまま終わってしまっているのが多く、
あれ、飛んだのは誰?とか
結局死体は何だったの?とか
割と疑問放置なんだけど、怪談としてはこれでいいのか?

それにしても季節的に合ってるとはいえ、今日一日、
仕事が終わってからなので、実質3、4時間ほどで読み終わるとは思ってなかった。
っていうかビビリな私はちょっと寝れねぇぜ…電気点けとこか…
偶然にも深夜12時に鏡の前に立ってしまったことに気づいて、
思わず鏡から目が離せなかった。。。。
コックリさんとかやったよ小学生の時。
うちの小学校の花子は、通例通りのトイレだったな。
七不思議とか階段の数とかポマードとか懐かしいフレーズも飛び交う。
学校で記憶の風化は多少あれど、やっぱり想像力が違うね。
怖いから。。。。

  

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