吹き溜まり
本や音楽やライブや映画やゲームのこと。
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『冷たい校舎の時は止まる』
辻村深月・著の㊤㊥㊦の3冊からなる長編青春ミステリー。(文庫版は㊤㊦の2冊)
この著者の作品はこれが初めてだが、私的にかなり当たりな作品となった。
その日は朝から雪が降っていた。
私立青南学院高校の生徒が8人、雪の中を学校へと向かう。
雪に、寒さに悪態をつきながら、いつも通りに登校する彼ら。
電気や暖房の入った学校。
しかし肝心の生徒や先生がいない。
奇妙に思いながらも、構内を探す彼ら。
諦めて帰ろうとした時、玄関の扉は開かなかった―――
こういうさ、閉鎖空間に閉じ込められた人間の末路って、
疑心暗鬼になってどんどん自滅していくのが定番だろう?
例えば小川一水氏の『天涯の砦』もそのネタで、さらに登場人物のキャラに悪がいたり。
しかし、この『冷たい校舎の時は止まる』は異なる。
『天涯の砦』を読んでいる時は、登場人物に本当に憤慨したものだけど、
『冷たい~』を呼んでいる間は、メインの8人が全部愛しい。
しかも、この著者の人物設定や描写がとてもいい。
少なくとも私が読むにはとても合っている。
リアルな描写だとありきたりな感想は言いたくないけども、
キャラクター一人一人が抱える問題とその正確と思考回路が、なんとも言えなくいい。
学校に閉じ込められた彼らの一人があることに気付く。
青南高校ではその年の学園祭に飛び降り自殺があった。
しかし、その自殺した生徒の顔も名前も誰も思い出せない。
そして、一人、また一人と仲間が消えていく。
凄惨なマネキンの状況を残して―――
それと同時に、屋上には一人の人間が寒さに凍えながら佇んでいた。
何か、生徒の男性陣がとてつもなくかっこいい。
読みながらふとその一人と自分が似ていることに気付く。
それは仲間の一人の昭彦。
明るく、人付き合いのいい彼は女子にも人気がある男子高校生。
でも、それと同時に彼自身は自分の淡白とも冷淡とも言える状況判断にも自覚があった。
そして、私もそんな自覚がる。
なにせ、親に冷たい人間と言わしめたことのある自分だ。
興味の無いことに関しては徹底的に無頓着だし、
ニュース報道で悲劇的な話題について、事実を客観的に冷淡に評価したりする。
この作品の8人の仲間は、やはりそれぞれ過去を抱えているけども、
なんとも素敵に愛しいキャラクター像を書き上げた著者に惚れそう。
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