吹き溜まり
本や音楽やライブや映画やゲームのこと。
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『悪の教典』/貴志祐介
何かと話題になっていたこの作品。
TVで紹介されていたのを見てから本屋で発見し、
何か面白そうかも…と(積読山は忘れて)購入。
ハードカバー本は久方ぶりだぜ。
といっても読後3週間以上経っていたり;
何気に分厚い(3cm×2)が時間はあまりかからなかった。
著者の本はこれが初めてで、昔映画化もされ話題になった『青の炎』は、
何か漫画化したのをちょろっと読んだような気がする。
大筋というか、この本の中に何が書かれているのかは、
帯にはっきり明記してある。
うちの学校には怪物がいる。
学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は、
高いIQと好青年の貌を持っていた。 『悪の教典』帯より
読み始めてすぐに教典の実行者は知れる。
【いい先生】、しかも現代の難しい子供像も内包した上での、
バランスを考えた【人気のある先生】。
容姿端麗。
優しい。
生徒思い。
守ってくれる。
自分を見てくれる。
自分(たち)の為に何かしてくれる。
初めこそ普通の親しみのある良い先生が描かれるが、
下巻のオープニングに向かっての緩やかだが確実な堕ち方が何とも言えない。
淡々と、調味料の選択と同じように、
考え、選択し、実行していく。
あれ、今の…?
ちょっと…
そ、そんな簡単に…
え?
というような感じで、一つまた一つと灯が消えていく。
実行者の先生はそれこそ、寝る前にキャンドルを消すくらいの意志で。
下巻における学校内での殺戮に至る思考回路の単純さに絶望する。
思考が飛び過ぎて怖いとも感じない。
ただ、何か気持ち悪さのある奇妙な実験のよう。
生まれおちてから感情が芽生えず、
結果周りに馴染めない自分をすぐ理解し、感情を意図的に表現した生き物。
感情のパターンやバリエーションを吸収し、
より、人間らしい、それも良い人間へと自分への客観像を形成していく。
他人の感情を観察、分析することで、それらを誘導することもできるようになる。
でも結局のところ、感情がなかった訳ではないと思うんだよね。
憐れみや、感謝は描かれていたから。
それも、自分の内で済むことを敢えて感情とさせたのだし。
計算上なら、その場面での憐れみは必要ない。
では、彼は一体何だったのか。
読み手の私が一番しっくりくるのが、ゲームみたいだったってのだ。
何かコマンドで動いてるって感じが読んでる最中からしていて。
作中一番多く描かれるのが、やはり彼のことだが、
掘り下げて過去やら思考やらがいっぱいある割には、
異常性でどんどん浮いていっている感じ。
そして、IQ高い先生に対しての生徒や、他の先生たちの抵抗が少ないのが、
ちょっと盛り上がりに欠けた。
摘まれるのが早すぎたり、あまりに役立たずだったり。
一方的な殺戮で終始先生の優勢で…あ、いや、
むしろ状況的には劣勢な上での最後の殺戮になるのか。
自棄になっての殺戮とも取れるが、
殺ッている最中は冷静なことこの上なく。
ココがこうなって、アレがそうなるから、コレをしておこう、みたいな。
先の展開が気になって、一気に読めた作品だけども、
最後の最後の絞めは、なんか符に落ちない。
Pも少なく、あそこで終わらすなら、もっと何か違った堕ちが欲しかった気がする。
唐突にぶった切られたような、急いで終わったような…
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