吹き溜まり
本や音楽やライブや映画やゲームのこと。
- 2025.07.09 [PR]
- 2006.01.09 『MOUSE』
- 2005.12.30 『クリスタルサイレンス』
- 2005.11.18 『優しい煉獄』
- 2005.11.16 『メモリアノイズの流転現象』
- 2005.11.15 『ソウルドロップの幽体研究』
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『MOUSE』
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MOUSE(マウス) 牧野 修 早川書房 1996-02 by G-Tools |
一言で言ってしまえばドラッグ・ドリーム。
ドラッグの常習者である18歳までの少年少女を主人公に、
常識的な感覚が麻痺し、それを超越した別次元の感覚が占領する空間。
その隔絶された空間で起こる、言葉で交わされる戦い。
今までドラッグ小説というのは呼んだことがなかったが、
何となくやはりどこかがダメになってしまった人間が刻々と描かれる、
というのを想像していたが、
これはその既成概念とは異なる感覚を受けた。
【ネバーランド】
18歳までの外の世界で生きることの出来ない少年少女が、
ドラッグを常習し、
ある者は自らで金を稼ぎ、
ある者はドラッグによる特異な感覚で生業とし、
またはそれで稼ぎ、
どの場合にもドラッグを体内に含まない者は存在しない、そんな区域。
【ネバーランド】で交わされる少年少女の生活と、
言葉による【落とす】行為。
短篇5つからなるストーリーは、最後の「ボーイズ・ライフ」で交錯する。
ドラッグを服用している者だけに通用する現実感。
そしてそれを利用して行われる言葉攻め。
相手個有にしか通用しない言葉を見つけ、バッド・ドリームへと誘う。
また、同じ幻覚を共有するために行われる同調行為。
不思議で意味のないことばで紡ぎだされる世界。
また、その【ネバーランド】の裏に潜む構造。
ドラッグの、奇妙でで残酷な感覚が味わえる作品。
解説で風間賢二氏が
「きわめて幻想的かつ思索的な”意識の変容”を語ったもの」
と書いている。
独特な言葉で描かれる感覚世界に酔いしれたい人向けな作品。
私はというと、そう退屈することも無かったものの、
面白いという作品ではないと思った。
『クリスタルサイレンス』
藤崎慎吾氏の作品は初めて手に取ったのだが、ネタは私好みな一方、
技術的な専門用語と、ネットワークに関する著者の独自の構築の展開に
多少理解がおいつかない部分が多かった。
はじめ火星に行くまでの、上巻の前半はなまぬる~い感じだったのが、
ひとたび火星に行ってからは、様々な調査と、発見と、問題と、
それを阻もうと命の危険にさらされる状況。
下巻はほぼネットワークにおける攻防で、混乱するが、
だいたいは感覚で把握し、難解な世界が先へと私の興味を促した。
現在でもネットワークは拡大と進化を続けているが、
この作品の中では現実とネットワークの境界があやふやともいえるほど、
ネットワーク界が進化している。
肉体が邪魔になるというほど常にネットワークに存在する者までいる。
でも、やはり一番の情報処理能力を持っているのは
人間の脳なのだなぁと納得させる部分もあり。
この場合の処理能力はただ単に量のことではなく性能において。
『優しい煉獄』
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優しい煉獄 森岡 浩之 小菅 久実 徳間書店 2005-04-16 by G-Tools |
そう書いてあった気がするけど。。。
科学技術が発達した未来において、
定期的に人格、あるいは記憶を保存し、
死後それを元に仮想現実での死後の世界を生活する
というのが可能となっていた。
ネットワーク上に存在するそれらは、
現実の人間とのコミュニケーションをも可能としたが、
処理速度が異なるため時間の速度の差が激しく、
スムーズにとはいかない。
その仮想現実において古株とも言える
自称探偵・朽網康雄を視点に出来事が描かれる。
仮想現実での暮らしはもちろん期限がないわけではなく、
生前の資金により利用料を支払い、それがなくなり次第、
仮想現実からも消滅することとなる。
そのためお金は誰もが欲しいところである。
設定は面白いのだが、いまいちインパクトに欠く。
自称探偵の主人公も、
自称というだけあって、いわゆる名探偵という感じはない。
依頼される件も、事件性の乏しい可愛いものである。
むしろ設定の中で、仮想現実の姿が変化していく方が面白かった。
『メモリアノイズの流転現象』
メモリアノイズの流転現象 上遠野 浩平 祥伝社 2005-10 by G-Tools |
シリーズ化するとは思わなかったこの作品、
登場人物は前巻同様、各界に多大なる影響力を及ぼす東澱家の者、
主人公’Sはもとより、ペイパーカットも登場している。
このシリーズはペイパーカットシリーズであろうから、
今後毎回登場するのだろう。
そしてペイパーカットが消えたときに、完結という形になると予想される。
杜名賀家の夫婦の離婚がスムーズに済むようにと依頼された、
私立探偵の早見壬敦。
彼には誰にも言った事のない、奇妙な能力があった。それによって、
無関係のはずだった20年前の杜名賀朋美の事件が露となる。
そしてペイパーカットもまた、
キャビネッセンス【生命と同価値の宝】を求めて現れていた。
同じく伊佐俊一と千条雅人も、ペイパーカットを追い、
同一の場所にあらゆる無関係とも思える人々が集まる
―――その中に意外な繋がりを隠して―――
今回はブギーポップを読んでいると、懐かしい名前が登場する。
『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』で登場した、
寺月恭一郎の名前である。
生前の彼に接触したことのある早見は、
彼に自らの能力を見抜かれていた。
その後寺月との関係はないようだが、
ここで寺月の名を見るとは思わなかった。
また、前巻のように千条を知る伊佐が、上手く彼を使いこなしているが、
千条の、場の雰囲気を考えない言動と、
人の会話らしくない言葉遣いにはすこしばかり苦労が見える。
人が生きるために、
それを失くしたら生そのものの意味がなくなると同等のもの。
それは人であり、ものであり、感情であり、
定義できないものもあるだろう。
しかし人はそれに自覚はなく、自覚がないからこその価値であり、
自覚した途端にそれらの意義は霧散してしまう。
私としては前巻よりも楽しめた作品となりました(*'ー'*)♪
『ソウルドロップの幽体研究』
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ソウルドロップの幽体研究 上遠野 浩平 祥伝社 2004-08 by G-Tools |
シリーズ第2巻がこのほど発売され、
またしても関連単語がでてきたので、
改めてまずはシリーズ第1巻の『ソウルドロップの幽体研究』を。
【生命と同等の価値のある物を盗む】奇妙な予告状。
犯行後の部屋から失くなっていた一つのキャンディ。
サーカム保険の調査員伊佐俊一と千条雅人、謎の多いこの二人は
予告状の犯人【ペイパーカット】を追っていた。
見た人によって、容貌も年齢も異なって見えるという不可思議な存在。
そして今、新たな予告状の元に事件が展開する―――
調査員の二人はそれぞれ一度死んでいる
といっても変わりない状態であり、
それぞれの瀕死の状態から、現在に至るまでに、
伊佐俊一は目を、千条雅人は脳を含め身体のほぼ全てを、
最新技術によって補っていた。
この二人のコンビがいい感じに面白い。
ペイパーカットも、いわゆる犯人というような固定された人物ではなく、
それが事件を不可思議なものにしている。
冒頭で霧間誠一の小説の一部が載っていて、
この作品もブギーポップのように、
人間の奇妙な感覚や精神状態を特化させた能力が存在し
物語全体の現実とは異なる浮遊感を醸し出している。